パパにおすすめのマンガはこれだ!「花男」松本大洋
同じ作品でも読む時期や自分の状況によって感じることは変わる。
僕が父親になってから読んで、一番感じ方が違ったのが、松本大洋のマンガ『花男(はなおとこ)』だった。
そこには僕の父親としてのスタンスの原点、こうあるべき、という姿が書かれていた。
この作品の主人公は、ガリ勉の大人びた少年・茂雄(しげお)。そして、父親は30歳を超えているのに、草野球の助っ人で生活をしており、いまだに「プロ野球選手になる!」と言っている子どもみたいな父親だ。
この大人と子どもが逆転した関係こそが、この作品の肝となる。
花男が息子に伝えた2つのメッセージ
茂雄と父親の関係は少し複雑だ。もともとは母親も含めた3人で住んでいたが、ある日、父親が「いつだって男の夢を砕くのは女と子どもです」とバットをもってユニフォーム姿で家を出て行ていく。
それ以来茂雄はずっと母親と暮らしていたが、ある夏、母親にいわれて、鎌倉で一人暮らしをしている父親のもとに預けられることになる。
最初の頃、常識も生活能力もない父親に対して茂雄は「父親らしくしろ!」と怒っていた。そんな大人びた少年だった茂雄だが、次第に父親のペースに飲み込まれていく。
父親との新たな共同生活、海の近くの新しい街での暮らし。そこで茂雄は勉強ばかりの日々で失っていた子どもらしい心を取り戻していく。
この作品を通して、父親は息子に二つのメッセージを伝える。
一つ目がバイクが壊れて歩くときにいった一言
「歩く速さでしかみえないものがある」
そして、茂雄が海に足を入れて「冷たい!」と言った時に叫んだ言葉
「冷たいか?感じろ!それが海だ。大切なのは感じること。心で聞け」
遊ぶ心とめんどくさいことを子どもに伝える
そんな息子に、父親は何を教えるべきなんだろう。
それは、めんどくさいこと、だと思う。
例えば、釣り。
魚なんてスーパーに売ってるから、釣る必要なんてない。でも、釣りから学べることがある。
他には焚き火だ。
家にいればガスで火がつくのに、外で焚き火をする必要なんてない。それでも、自分で火をおこすことで学べることがあるのだ。
用意されたもので遊ぶのではなく、ゼロからつくるんだ、それを教えるために、やりたいことは色々ある。
でも、自分自身がめんどくさくなって止めちゃったり、「もうやめようと」と嫁が止めたりする。
寒い日の焚き火とか。
それで、まぁやらなくていいか、と思う時もあるが、そんな時こそ、このマンガを読み返す。
「考えるな、感じろ、それが海だ!」
その力強いメッセージを読むと、心が奮いたつ。遊びを教えるためには、子どもよりも自分が真剣に遊ぶんだ。僕が伝えなくて、誰が伝えるんだ。
そういう熱い気持ちになる一冊である。迷えるパパには、ぜひおすすめしたい。
ちなみに僕はセリフが一個もない授業参観のシーンが大好き。