世界はまだ油断してるから

4歳と1歳半の男の子ふたりの子育てを父親目線で紹介します

子どもに死の意味を教えるのにおすすめの絵本「かないくん」

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こないだ本当にびっくりしたことがあった。


お布団に入って、みんなで寝ようかな、という時に僕が4歳の息子にちょっかいを出したら「もう!やだ!」と怒りだして、こんなことを言ったのだ。

 

「ねぇママ、パパを殺して、新しい世界を作ろうよ」

 

文字にするとかなりどぎついが、子どものかわいい声で言われると、ん?なんだ、なんだ、となる。

 

その後に何を言ったか脳が理解して、怒ることもできず、茫然としてしまった。

 

幼いから言葉の重みを分からずにアニメか何かの影響で「殺す」といってしまったのはまだ分かるけど「新しい世界」ってなんだよ。

 

なに、その神の視点。やめてほしい。なんて物騒な話だ。

 

いったいどういうつもりなんだろう。いつも見てるアニメはドラえもんだけど、そんなセリフ出てくるのかな。

 

そもそも息子は死ぬということを分かっているのだろうか。

 

4歳児にとって「死」とはなんなんだろう

 

こないだ息子がママに叱られた時に「僕が死んでもいいの?」と問いかけていた。

 

隣の部屋で聞いていた僕は、その言葉に驚いてしまった。

 

ずっとやりとりを聞いていたわけではないので、どういう流れか分からないけど使い方は正しいから、死ぬということをある程度理解しているのだろう。

 

その少し前、嫁がふざけて「ママはもうだめだ、後は任せたよ、バタっ」とやったら、息子はベットに入って、わんわんといつまでも泣いていた。

 

「死」とは何か、死んだらどうなるか、そういうことは分からないだろうけど「死んだらもう会えない」ということは分かっているみたいで、少しずつ、幼い息子の頭の中に「死」というものが入り込んでいるようだ。

 

こんな小さいのになんでだろう、と思うが、自分自身を振り返ると、小学校に入る前ぐらいの頃に、明確に死を意識したことがある。

 

それは父親と寝ている時で、なんとなく死を理解し始めた僕は急に「ということは父もいつか死ぬ」ということに気付いて怖くなって、一人でメソメソと泣いていた。

 

父は僕が隣で泣いていることに気づかず、すやすや寝ていた。その寝ている姿がさらに死を連想させて怖くなった。

死は情報でしかないのかもしれない

 

中学校の時の同級生が亡くなったという話を、同窓会で聞いたとき、それは事実なんだけど、不思議な感じがした。

 

彼が亡くなったのは3年前らしいけど、でも、僕は知らなかったから、ずっと生きていると思っていた。

 

それってまるで星の輝きのようだなと思った。僕らが見ている星の輝きは何百年も前に星が放った光であって、実はその星はすでに消滅している、という話だ。

 

こないだ「羊毛とおはな」というミュージシャンを知って、何曲も聞いて、すごく好きになってライブに行こうと思って調べたら、2015年の4月にボーカルの千葉はなさんが亡くなっていて驚いたことがある。

 

それも同じ理屈だと思う。知らなければ、ずっと生きていたのだ。

 

不思議な話だが、現代における死とはそういうことなのかもしれない。

 

それはこうも言える、死が身近なものから「情報」になった時、それを知らなければ生きているのと同じなのだ。

 

子どもにどうやって「死」を教えるか 

ずいぶん前に小学校でハムスターを飼う理由は、2年間のクラス替えの前に寿命で死ぬから、子どもに死を教える意味でもふさわしいという話を聞いたことがある。

 

また、ゴルゴ13の130巻にこんな言葉がある。

 

「子供が産まれたら子犬を飼うがいい、子犬は子供より早く成長して、子供を守ってくれるだろう。そして子供が成長すると良き友となる。青年となり多感な年頃に犬は年老いて、死ぬだろう。犬は青年に教えるのである、死の悲しみを」

 

確かに動物を飼って、死を教えるというのは一つの手だと思う。

 

でも、いきなり飼えというのは難しい話だ。しかも、死を教えるためなんて、やだ。

 

そう思っていた時に読んだのが「かないくん」という絵本だった。

 

同級生の死を描いた絵本 

 

「かないくん」は、絵が松本大洋、詩が谷川俊太郎、装丁が祖父江慎という豪華メンバーで作られた本である。

 

谷川さんは「スイミー」をはじめ、数多くの絵本で文を担当してきた人。

 

その谷川さんが84歳になって書いたのが、同級生が死んだ話だった。

 

お友達が死んだ、周りはどうなる、自分はどう思う、変わらないもの、そして変わってしまったものが描かれる。

 

「みんな、かないくんのこと忘れちゃったの」というのがグサっときた。お葬式でテキパキしてるおばちゃんとか見ると、確かにそう思う。

 

素晴らしい松本大洋の絵で読み進んでいると、途中から急に場面が変わり、死をどう描けばいいのかわからない、 作家が出てきて、そしてラストは、けっこう意外な展開で終わる。終わりは始まりだと。

 

もしも、子どもにどうしてこの終わりなの?と聞かれても答えるのは難しい。そんな終わり方だ。

 

でも、そういうスッキリ、消化できないラストだからこそ意味があると思う。

 

子どもにも読ませたいけど、大人でも楽しめる本だ。

 

そう、僕らは絶対に死ぬ。こんな先が見えない時代でもそれだけは100%だ。

 

だからこそ、この本は死ぬまでに読んでおくべきだと思う。